判例の小窓 bS(平成23年12月) 



【コメント】
 最高裁判所大法廷は、第1審の裁判員裁判により被告人が懲役9年及び罰金400万円の実刑判決を宣告された事件で、裁判員裁判は憲法に違反しないという判決を下記のとおりしました。この結論は大方の予想に沿うものでしたが、憲法に違反しないという個々の理由付けについては、国民の司法参加を強調する以外に目新しいものはありませんでした。

最高裁判所平成23年11月16日大法廷判決(上告棄却)

裁判員裁判は憲法に違反しない。

1 被告人(45歳)は、覚せい剤を密輸入したとして覚せい剤取締法違反(営利目的輸入罪)、関税法違反の罪名で起訴され、第1審の千葉地裁で、裁判員裁判によって懲役9年及び罰金400万円の実刑判決を宣告され、控訴したが、東京高裁で控訴棄却の判決を宣告され、最高裁判所に上告した。弁護人が提出した上告理由は多岐にわたるが、裁判員裁判法とそれに基づく一審の裁判員裁判が憲法違反であるというものであった。
2 最高裁判所は、その主張に鑑み、事件を大法廷(最高裁裁判官15人全員)で審理した。
3 最高裁判所は、上告理由に対する判断として、裁判官全員一致で、次のとおり説示した。
@ 憲法は、刑事裁判における国民の司法参加を許容しており、憲法の定める適正な刑事裁判を実現するための諸原則が確保されている限り、その内容を立法政策に委ねている。
A 裁判員制度は、憲法31条(法定手続の保障)、32条(裁判所において裁判を受ける権利)、37条1項(刑事被告人の、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利)、76条1項(すべての司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属す)、80条1項(下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の名簿によって内閣が任命)に違反しない。
B 裁判員制度は、憲法76条3項(裁判官は良心に従い独立して職権を行い、憲法と法律にのみ拘束される)に違反しない。
C 裁判員制度は、憲法76条2項(特別裁判所は設置できない)に違反しない。
D 裁判員の職務等は、憲法18条後段が禁ずる「苦役」に当たらない。
4 判決理由中で、憲法は国民の司法参加を許容しており、上記諸原則が確保されている限り、陪審制とするか参審制とするかも含めて、その内容を立法政策に委ねていると述べ、裁判員の職務を「苦役」というのは必ずしも適切でなく、相当な理由があるときは裁判員を辞退することができる制度になっているし、旅費日当の支給による負担軽減の経済的措置も講じられていると指摘した。
5 なお、この事件は、裁判員裁判自体の違憲を主張する弁護人の上告理由に鑑み、事件が小法廷から大法廷に回付されたたものである。弁護人はその段階で、大法廷の裁判長である竹崎博允長官について、「長官が裁判員裁判制度を説明するパンフレットの配布を許したり、制度を肯定するような発言をした」などと主張して忌避申立をした。この忌避申立についての審理は、長官が関与せずに、「司法行政事務への関与であり、具体的な事件との関係で法的見解を示したものではない。」として申立が却下され、長官は事件の審理に復帰した。

 


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