判例の小窓 bT(平成23年12月) 



【コメント】
 最高裁判所は、選挙管理委員の報酬を月額制にしていることが地方自治法に違反しないという判決を、下記のとおりしました。選挙管理委員の職務の重要性は理解できることですが、委員会の開かれる日に欠席しても報酬が支給されることになり(日額制なら欠席すれば支給されない)、過大な報酬規定との批判は免れません。

最高裁判所平成23年12月15日第一小法廷判決(原判決破棄)

 滋賀県選管委員の報酬を月額20万2000円と規定した県条例の定めは地方自治法に違反しない

1 原告は、滋賀県の住民であるが、滋賀県労働委員会、収用委員会、選挙管理委員会の各委員の報酬について、滋賀県特別職の給与等に関する条例が月額制を採りその月額を20万2000円と定めていたことを、勤務日数に応じてこれを支給すると定める地方自治法203条の2第2項本文に反する違法、無効なもの主張して、その月額報酬に関する公金の支出の差し止めを求めた。
2 第1審(大津地裁)、第2審(大阪高裁)とも、原告の主張を認め、差し止め請求を認容した。なお、滋賀県は、本件係争中に条例を改正し、労働委員会と収用委員会の各委員については、平成23年4月1日から、勤務日数1日につき会長2万7800円、それ以外の委員2万4700円と日額報酬制に、選挙管理委員については月額17万8000円に改めた。
3 最高裁判所(第一小法廷)は、先ず、労働委員会と収用委員会の各委員については日額報酬制に移行しているので今後月額報酬として公金が支出される蓋然性がないとして、差し止めを求める訴えを不適法とした。
4 最高裁判所は、選挙管理委員会の委員の報酬については、昭和31年の地方自治法の改正にあたり、「議会の議員以外の者に対する報酬は、その勤務日数に応じて支給する。」という地方自治法203条2項改正案(政府案)が衆議院地方行政委員会の審議で「但し、条例で特別の定めをした場合は、この限りでない。」と付加修正して可決され、これが現行203条の2第2項となったこと、地方自治法が日額報酬制以外の報酬制度を定める場合の実体的な要件を何ら規定していないことなどを説示した上、どのような報酬制を採用するかは条例を制定する議会の裁量に委ねられていること、選挙管理委員会は、独立して責任を負う立場にあり、業務が広範で、公正中立性、専門性が必要で、一定の水準を備えた人材の一定数の確保が必要であること、形式的な登庁日数のみをもって勤務の実質が評価され尽くされるものとはいえないこと、その他諸般の事情を総合考慮すれば、月額報酬制を採り、月額20万2000円と定めた滋賀県条例の規定が特に不合理であるとは認められず、県議会の裁量権の範囲を超え又は濫用とはいえないから、違法、無効であるということはできないとした。(選管委員に関し原判決破棄、第1審判決取消・請求棄却)
5 最高裁判所(第一小法廷)横田尤孝裁判長は、補足意見の中で、原判決(大阪高裁)が「今日では、多くの地方公共団体において財政的困難に直面し、首長等が法や条例で規定されている給与を一部カットする非常措置をとったり、職員の給与に減額措置をとるような状況に立ち至っていることは周知の事実である。また、一般にも、より適正、公正、透明で、説明可能な行政運営が強く求められる社会状況になって」いると判示しているところ、その状況認識・指摘自体は妥当なものと思われる、と説示している。(裁判官5人全員一致、補足意見はあるが、少数意見は無し)


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