判例の小窓 bU(平成23年12月) 



【コメント】
 最高裁判所は、安全性が確保されない余りにひどい違法建築については、注文者が工事を強要したなどの事情がないときは、契約が無効であり、請負工事人は工事代金を注文者に請求することができないとして下記のとおり判決しました。建築基準法違反など行政取締法規に反する契約が脱法の程度がひどいため私法上も無効となったケースです。

最高裁判所平成23年12月16日第二小法廷判決(原判決破棄・差戻)

 建築基準法等に適合しない建物の建築を目的とする請負契約が公序良俗 に反し無効とされた事例
 違法建物を建築する無効な請負契約に基づく建築工事の施工開始後にな された追加変更工事の合意が公序良俗に反しないとされた事例

1 被上告人Yは、請負人として、注文者Bとの間で平成15年2月にマンション2棟の新築請負工事を代金1億1245万円余りで受注し、次に同年5月に注文者としてこれを請負人Xに対し工事代金9200万円で発注した。BとYは、この建物を建築基準法等の法令に従って建築すると貸室数が少なくなり賃貸業の採算がとれないので、適法な建築確認を受けた図面(確認図面)に基づき建築して検査を受けた後に、別の実施図面に従って違法建物の建築工事を施工することにした。請負人Xは、BとYとの上記合意について確認図面と実施図面の相違点を含めて詳細に説明を受けて了解して、Yとの間で本件請負契約を締結した。
2 本件建物は、実施図面どおりに建てると、耐火構造、北側斜線制限、日影規制、建ぺい率制限、容積率制限、避難通路の幅員制限等に違反する違法建物となるものであった。Xは、施工中に地下室が確認図面と異なると区役所に指摘され是正計画書を作成し、また近隣住民から種々の苦情を述べられたため、Yと合意をして追加変更工事を施工した。Xは、平成16年5月検査済証を受けて建物をYに引き渡した。YはXに代金として合計7180万円を支払った。
3 Xは請負残代金の支払を求める訴訟を提起し、Yは損害賠償請求の反訴を提起した。原審(東京高裁)は、本件各契約は違法建物の建築を目的とするもので、公序良俗違反、強行法規違反により無効であるとし、追加変更工事の分も含めて、Xの本訴代金請求を棄却した。Xは破産し、その破産管財人が上告人として訴訟手続を受継した。
4 最高裁判所(第二小法廷)は、本件が確認済証や検査済証を詐取して違法建物の建築を実現するという大胆で、極めて悪質なもので、加えて計画どおりの建物が建築されれば居住者や近隣住民の生命、身体等の安全に関わる違法を有する危険な建物となり、事後の是正が相当困難なものも含まれているとして、Xは計画を提案したものではないが、建築業者としてYからの依頼を拒絶することが困難であったという事情も窺われず従属的立場にあったとは言い難いので、当初の本件請負契約は公序良俗に反し、無効であると説示した。その上で、追加変更工事には違法建築部分を是正する工事も含まれているので、当初契約の一環とみることはできず、違法を是正しないまま一部変更する部分があるとすればその部分は別の評価を受けることになるが、そうでなければ、反社会性が強い行為と言えず、その施工の合意が公序良俗に反するということはできないとした。上告人の請求については、追加変更工事の内容やその代金、本工事の代金との区分等が明確にされていないので、上告人の敗訴部分を全部破棄し、更に審理を尽くさせるため、原審(東京高裁)に差し戻した。(裁判官4人全員一致、少数意見なし)

 


  判例一覧へ   判の小窓5へ   判の小窓7へ