判例の小窓 bP1(平成24年3月) 



【コメント】
  最高裁判所は、配当異議事件で仮差押債権が本案訴訟で認容された債権と異なるものであっても請求の基礎を同一とするものであれば仮差押は有効であるとして下記のとおり判決しました。配当異議訴訟の当事者は仮差押が有効であることを前提にして配当される額を争っているに過ぎないので、この結論自体は当然ですが(原審東京高裁が間違っている。)、保全処分異議訴訟の場合には、この判決の考え方は保全申立人に極めて有利で、異議申立人にはとても不利です。

最高裁判所平成24年2月23日第一小法廷判決(原判決破棄・自判)

 仮差押命令は、当該命令に表示された被保全債権と異なる債権についても、これが上記被保全債権と請求の基礎を同一とするものであれば、その実現を保全する効力がある。

1 本件は、上告人(原告)Xが、上告人X及び被上告人Yを債権者、Aを債務者、国を第三債務者とする配当事件について東京地裁が作成した配当表の変更を求める配当異議事件である。
2 Xは、XのAに対する貸金債権を担保するために根抵当権の設定された建物をA及びCが取 り壊しによって侵害したとして、その共同不法行為による損害賠償請求債権4000万円の内金2000万円を請求債権として、AがBに対し有する明渡料支払請求権の内金2000万円につき、債権仮差押命令の発令を受けた。Aは仮差押解放金2000万円を供託して仮差押命令の執行の取消を得た。このため本件仮差押命令の効力は上記供託金の取戻請求権の上に移行した。他方、Yは、複数の金銭消費貸借契約による貸金債権(元本4000万円、遅延損害金4269万9016円)について公正証書正本により、上記供託金の取戻請求権を差し押さえた。
3 国は仮差押と差押が競合したため東京地裁に事情届を提出した。同地裁は、配当期日にXへ の配当額を389万6374円、Yへの配当額を1611万1316円とする配当表を作成して示した。Xは、YのAに対する公正証書記載の債権が架空のものだとして期日に異議を述べ、配当異議訴訟を東京地裁に提起した。
4 ところで、XのAに対する本案訴訟の判決は、主位的な不法行為による損害賠償請求が棄却、 予備的な貸金請求が認容、として確定した。
5 配当異議事件で、原審(東京高裁)は、本案訴訟でXの損害賠償請求権の存在を否定する判決が確定しているのでXに対する配当を基礎づける債権が存在しなかったことになり、Xに訴えの利益がないとしてXの配当異議の訴えを却下した。なお、原審は、訴訟物を異にする貸金債権が認められているとしても本件仮差押命令の効力が維持されることにはならず、仮に、被保全債権(本件では不法行為の損害賠償債権)と予備的請求として認容確定した貸金債権が同一の客観的事実に基づくものであるときは本件仮差押命令の効力が維持されると解する余地があるとしても、各債権の発生の日時、場所、行為内容等からすれば、これらが同一の客観的事実に基づくものと解することもできないと判断した。
6 最高裁判所(第一小法廷)の判断。保全命令が一定の権利関係を保全するため緊急かつ必要の限度において発令されるものであって権利関係を疎明する資料についても制約があることなどを考慮すると、仮差押命令は、当該命令に表示された被保全債権と異なる債権についても、これが上記被保全債権と請求の基礎を同一とするものであれば、その実現を保全する効力を有するものと解するのが相当である(最高裁判所昭和26年10月8日第一小法廷判決民集5巻11号600頁参照)。本件では、債務名義に表示された金銭債権が仮差押命令の被保全債権と異なるが、請求の基礎を同一にするものである。Xの得た仮差押命令の被保全債権である本件損害賠償債権は、債務者であるAが債権者であるXに無断で担保物件を取り壊したことにより、本件貸金債権の回収が困難になり、本件貸金債権相当額を含む損害を被ったことを理由とするものであるから、本件貸金債権の発生原因事実は本件損害賠償債権の発生原因事実に包含されていることは明らかである。そうすると、本件貸金債権に基づく請求は、本件損害賠償債権に基づく請求と、請求の基礎を同一にするものというべきである。 
 以上によれば、Xの被保全債権である損害賠償請求債権については請求棄却の判決が確定しているとしても,Xは本件貸金債権に基づくAに対する請求を認容する確定判決を取得しているのであるから、配当を受領しうる地位を有しているというべきである。Xの異議の訴えを却下すべきものとした原判決は破棄を免れず、第1審判決を取り消し、本件を東京地方裁判所に差し戻す。(裁判官5人全員一致)

  なお、最高裁判所昭和26年10月18日第一小法廷判決民集5巻11号600頁の事案は、仮処分異議事件であり、仮処分申請の被保全権利が所有権に基づく土地建物の引渡と虚偽譲渡を原因とする所有権移転登記の抹消登記請求、本案の請求が詐害行為取消権に基づく譲渡行為の取消と同抹消登記請求で、原審福岡高裁も最高裁第一小法廷も請求の基礎に同一性があるとして、仮処分債務者の控訴、上告を棄却し、仮処分を認可した第一審判決を維持した。

 「請求の基礎」は、民事訴訟法143条1項(原告は、請求の基礎に変更がない限り、口頭弁論の終結に至るまで、請求又は請求の原因を変更することができる。)に規定されており、「請求の基礎」の同一性はかなり広く解されている。


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