判例の小窓 bP3(平成24年3月) 



【コメント】
 最高裁判所は、不法行為以外でも相当な弁護士費用を損害として相手方に賠償請求ができる場合があるとして、下記のとおり判決しました。不法行為の場合は依頼した弁護士の費用のうち相当額を相手方に賠償させることが出来ます。債務不履行でも、同様に主張立証が困難な事案で弁護士に訴訟を依頼しないと法的保護が期待できない場合には相当額の弁護士費用を相手方に賠償請求できるとするのは、実務の傾向に合致しており、相当と思われます。


最高裁判所平成24年2月24日第二小法廷判決(破棄差戻)

 安全配慮義務違反を理由とする労働者の使用者に対する損害賠償請求訴訟においても、訴訟追行を委任した弁護士に対する相当額の範囲の弁護士費用は上記義務違反と相当因果関係に立つ損害というべきである

1 上告人(原告)Xは、被上告人(被告)Y会社の従業員であるが、チタン事業部に属しチタン材のプレス作業に従事していたところ、プレス機に両手を挟まれ、両手の親指を除く各4指を失うという事故に遭った。Yは、労働契約上、Xの使用者としてプレス機に安全装置を設けて事故を確実に回避するべき義務、プレス機の使用の際の注意をXに与えるべき義務を怠り、その結果本件事故が生じた。Xは、Yに安全配慮義務違反があったして、弁護士に訴訟追行を委任し、安全配慮義務違反と相当因果関係に立つ損害の賠償として5913万1878円(うち弁護士費用530万円)及び遅延損害金を請求した。
2 原審(大阪高裁)は、1876万5436円及び遅延損害金の限度で債務不履行に基づく損害賠償請求を認容したが、弁護士費用の請求については、失当であると判断して棄却した。
3 Xは、弁護士費用の損害については、190万円と遅延損害金を求める限度で上告した。
4 最高裁(第二小法廷)は、次のように判断して、Xの弁護士費用の上告理由を認めて原判決をXの弁護士費用敗訴部分のうち190万円と遅延損害金を求める限度で破棄し、大阪高裁に差し戻した。その余の上告理由は不適法として排除されている。
 すなわち、安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償請求(最高裁判所昭和56年2月16日第二小法廷判決民集35巻1号56頁参照)は、不法行為に基づく損害賠償請求と主張立証がほとんど変わるところがない。そうすると、労働者がこれを訴訟上行使するには弁護士に委任しなければ困難な類型に属する請求権である。
 したがって、労働者が使用者の安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償を請求するために訴えを提起することを余儀なくされ、訴訟追行を弁護士に委 任した場合には、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り、上記安全配慮義務違反と相当因果関係に立つ損害というべきである(最高裁判所昭和44年2月27日第一小法廷判決民集23巻2号441頁参照)。(裁判官4人全員一致)
 なお、上記最高裁判所昭和44年2月27日第一小法廷判決民集23巻2号441頁の事案では、不法行為の被害者が自己の権利擁護のため訴訟提起を余儀なくされ、訴訟追行を弁護士に委任した場合に、その弁護士費用のうち相当額が不法行為と相当因果関係に立つ損害とされた。
 


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