判例の小窓 bP5(平成24年5月) 



【コメント】
 雇い主Yは、従業員Xが精神的な不調により休職の措置を求めたのに対し、それを認めず出勤を促し、Xが有給休暇全部の取得後も出勤せず約40日間にわたり欠勤したことから、諭旨退職の懲戒処分をしました。Xは、この処分は無効であると主張し、雇用契約上の地位を有することの確認及び賃金等の支払を求めて訴訟を提起しました。  最高裁判所は、Xの欠勤は就業規則所定の懲戒事由である「正当な理由のない無断欠勤」には当たらないと判断しました。事案の状況に対応した適切な判断と思われます。


最高裁判所平成24年4月27日第二小法廷判決(上告棄却)

 就業規則所定の懲戒事由である「正当な理由のない無断欠勤」に当たるとしてされた諭旨退職の懲戒処分が無効であるとされた事例

1 被上告人(原告)Xは、上告人(被告)Yに雇用された従業員である。Xは、被害妄想など何らかの精神的な不調により、実際には事実として存在しないにもかかわらず、約3年間にわたり加害者集団からその依頼を受けた専門業者や協力者らによる盗撮や盗聴等を通じて日常生活を子細に監視され、これらにより蓄積された情報を共有する加害者集団から職場の同僚らを通じて自己に関する情報のほのめかし等の嫌がらせを受けていると認識している。そして、そのために、同僚らの嫌がらせにより自らの業務に支障が生じており、自己に関する情報が外部に漏洩される危険もあると考え、Yに上記被害にかかる事実の調査を依頼した。しかしYからは納得できる調査結果が得られなかった。
2 Xは、Yに休職を認めるように求めたものの認められず出勤を促すなどされたことから、自分自身が上記被害に係る問題が解決されたと判断できない限り出勤しない旨をあらかじめYに伝えた上で、有給休暇を全部取得した後、約40日間にわたり欠勤を続けた。
3 Yの就業規則には、懲戒事由として「正当な理由のない無断欠勤」が掲げられている。Yは、これに基づき、Xに対し、諭旨退職の懲戒処分をした。
4 原審(東京高裁)がXの主張を肯定し、請求を認容したので、Yが上告受理申立をした。なお、Yの上告受理申立の理由は上告審判決からは判読できない。
5 最高裁(第二小法廷)は、Yの上告受理申立を認めず次の判断を示した。
 精神的な不調のために欠勤を続けている労働者に対しては、使用者は精神科医による健康診断を実施する等した上で、必要な場合には治療を勧め、休職等の処分を検討し、その後の経過を見るなどの対応を採るべきであり、これなくして、出勤しない理由が存在しない事実に基づくものであることから、直ちに諭旨退職の懲戒処分の措置を採ることは、精神的な不調を抱える労働者に対する対応としては適切なものとはいい難い。本件は正当な理由のない無断欠勤に当たらない。(裁判官3人の全員一致)


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