判例の小窓 bP6(平成24年6月) 



【コメント】
 被告人や被疑者は、何時でも弁護人を選任することができます(刑訴法30条)。弁護人は弁護士の中から選任するのが原則で(同法31条)、裁判所は、弁護人の数を裁判所規則の定めに従い制限することができ(同法35条)、刑訴規則27条で、被疑者の弁護人の数は各被疑者につき3人を超えることできないと定められています。この人数の制限は、裁判所が特別の事情があると認めて許可した場合は、この限りでないとされています(同規則27条1項ただし書)。
 本件被疑者は、3人を超えて6人の弁護人を選任する許可を求めましたが、裁判所は不許可にし、原審(高松高裁)も同旨であったため、最高裁に特別抗告を提起しました。
 最高裁判所(第三小法廷)は、特別抗告理由を排斥しましたが(憲法違反などの主張がないため)、職権による判断として、本件で3人を超える弁護人を選任する必要性を認め、何人の弁護人を許可するのが相当であるかを原審で改めて検討する必要があるとして、原審に差し戻しました。被疑者弁護の重要性を指摘した適切な判断と思われます。

最高裁判所平成24年5月10日第三小法廷決定(原決定取消・差戻)

 本件法人税法違反被疑事件では、3人を超える数の弁護人を選任する必要があり、かつ、それに伴う支障が想定されないので、被疑者につき3人を超える数の弁護人の選任を許す刑訴規則27条1項ただし書に定める「特別の事情がある」場合に当たるというべきである。

1 被疑者は、会社の代表取締役であるが、共犯者らと共謀の上、同社の業務に関し、法人税合計3600万円余りを免れたという被疑事実で勾留されている。接見禁止決定も出ている。被疑者は、弁護人を6人とすることの許可を求めたが、却下されたので抗告した。抗告審(高松高裁)も原々審の判断を支持して、抗告を棄却した。
2 最高裁(第三小法廷)は、次のように原決定を取消し、本件を原審に差し戻した。
  刑訴規則27条1項ただし書に定める特別の事情については、被疑者弁護の意義を踏まえると、事案が複雑で、頻繁な接見の必要性が認められるなど、広範な弁護活動が求められ、3人を超える数の弁護人を選任する必要があり、かつ、それに伴う支障が想定されない場合には、これがあると考えられる。本件は、税務申告書に架空の減価償却費用を計上するなどして多額の所得を秘匿したという事件につき、犯意、共謀等を争っている複雑な事案で、接見禁止中であり、弁護人による頻繁な接見の必要性があること、会社の従業員、税理士事務所職員ら多数の関係者が存在し、これらの者との弁護人の接触が必要とされることなどが認められ、上記支障も想定されないから、特別の事情があるものというべきである。(裁判官5人の全員一致)


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