判例の小窓 bP7(平成24年8月) 



【コメント】
 勝訴した金銭債権者Xが強制執行として、債務者Yの預金を差押えようとして銀行Zを第三債務者として差押えを申し立てるには、どの程度預金債権を特定表示しなければならないか問題があります(銀行は預金の有無内容を事前には明らかにしない。)。本件では、原々審(名古屋地裁)及び原審(名古屋高裁)は、将来発生する債権を対象に加えたことによって、民事執行規則133条2項の求める「債権を特定するに足りる事項及び範囲」の記載に欠けるとし、全部却下しました。最高裁判所第三小法廷は、将来の債権の部分については差押債権の特定を欠くとして、原審の判断を支持し、現存の預金債権の部分については特定に欠けることがないと判断し、原々審に差し戻しました。
 最高裁判所第三小法廷は、平成23年9月20日、メガバンクなどについて複数の支店の預金を対象とした順位付けによる包括的な債権差押申立を差押債権の特定を欠くと判断しています(民集65巻6号2710頁、判時2129号41頁、NBL963号4頁)。

最高裁判所平成24年7月24日第三小法廷決定(一部破棄差戻)

 普通預金債権のうち差押命令送達時後同送達の日から起算して1年が経過するまでの入金によって生ずることとなる部分を差押債権と表示した債権差押命令の申立てが、差押債権の特定を欠き不適法であるとされた事例

1 Xは、Yに対する強制執行として、YのZ銀行の特定の普通預金口座に係る普通預金債権の差押えを求める申立をした。Xは、上記普通預金債権のうち、差押命令送達時に存在する部分(現存預金)だけでなく、同送達後同日から起算して1年が経過するまでの入金によって生ずることとなる部分(将来預金)も表示して、順序を入金時期の早いものから差押債権目録記載の金額(債務名義の金額)に満つるまでとした。 
2 原審は、将来債権については、第三債務者Zが差し押さえられた債権を識別できず、差押債権の特定を欠くものとし、将来預金を現存預金とともに表示したことによって差押債権そのものの特定が不十分となっているとして、全部を不適法とした。 
3 最高裁(第三小法廷)は、差押債権の特定は、第三債務者において、直ちにとはいえないまでも速やかにかつ確実に差し押さえられた債権を識別できるものでなければならない(上記平成23年9月20日決定参照)として、将来預金の部分については特定を欠くが、現存預金の部分については識別が可能で、特定に欠けるところがないと判示した。(裁判官5人の全員一致) 
4 田原睦夫裁判官は、補足意見で、将来預金に対する差押申立を不適法と説示し、民法478条(債権の準占有者に対する弁済)や481条(支払の差し止めを受けた第三債務者の弁済)によっては、適切に対応することができないと指摘した。 


  判例の小窓一覧へ   判例の小窓16へ   判例18へ