判例の小窓 bP8(平成24年9月) 



【コメント】
 勝訴した金銭債権者Xが強制執行として、債務者Aの所有する建物を賃借している第三債務者Yに対し賃料債権を将来分も含めて差押えました。Aは約1年後に建物をYに売却してしまい、建物所有権がAからYに移転したため、建物賃貸借契約は混同により終了しました。Xは、AとYとの売買契約の効力を争うとともに、仮に混同が生じるとしても、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでないとの規定(民法520条但書)を根拠にして争い、Yを被告にして、移転登記抹消請求、賃料債権取立訴訟を提起しました。原審(大阪高裁)は、差し押さえられた債権は混同によっては消滅しないとのXの主張を認め、建物所有権がYに移転した後の賃料債権についてもYにXへの支払いを命じました。最高裁判所第三小法廷は、建物所有権がYに移転した後には賃料債権は発生しないとして、原審の判断を破棄し、その部分に限り事件を原審に差し戻しました。未発生債権には民法520条但書が適用されないことになります。
 Xは、AのYに対する賃料債権について将来にわたって債務名義の満額に達するまで差し押さえましたが、A所有の当該不動産の差押えをしておらず、Aは不動産の譲渡が詐害行為にわたらない限り可能であったと思われます。

最高裁判所平成24年9月4日第三小法廷判決(一部破棄差戻)

 賃料債権の差押えの効力発生後に賃貸借契約が終了した場合において、その後に支払期の到来する賃料債権を取り立てることの可否(消極)

1 Xは、Aに対する強制執行として、平成20年10月にA(建物所有者)のY(賃借人)に対する賃料債権を将来支払期限の到来する分も踏めて差し押さえた。YはAとの間で、平成21年12月25日までに本件建物を含む複数の不動産を買い受ける契約を結び売買代金をAに支払った。Yは、上記賃料債権は混同により消滅したなどと主張している。なお、AとY(ともに会社)の間には経営陣に人的関係がある。 
2 最高裁(第三小法廷)は、賃料債権発生の基礎となる賃貸借契約が終了したときは、差押えの対象となる賃料債権は以後発生しないこととなり、したがって、賃貸人が賃借人に賃貸借契約の目的である建物を譲渡したことにより賃貸借契約が終了した以上は、その終了が賃料債権の差押えの効力発生後であっても、賃貸人と賃借人との人的関係、当該建物を譲渡するに至った経緯及び態様その他の諸般の事情に照らして、賃借人において賃料債権が発生しないことを主張することが信義則上許されないなどの特段の事情がない限り、差押債権者は、第三債務者である賃借人から、当該譲渡後に支払期の到来する賃料債権を取り立てることができないというべきであり、上記特段の事情の有無について審理を尽くさせるため、その部分を原審に差し戻すと判示した。 (裁判官5人の全員一致) 


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