最近の活動レポート



1年間の会務の総括と今後の課題


2010年度京都弁護士会会長
安保嘉博

1、昨年、会長に立候補するにあたり、どこかの政党にならってマニフェストを掲げさせて頂いた。

@人権賞の創設と貧困問題などでの人権擁護活動の展開
A法律相談件数の増大
B中小企業への法的サービス強化
C司法システムの改革
D委員会、常議員会、総会の活性化
E若手への業務支援の6つだった。

 4月に就任してからこれらの実現を目指したところ一定成果があがった分野がある。
しかし次々と現れる新しい問題の処理ににおわれ、ほとんど手つかずに終わった項目もある。この場をお借りしてその総括をさせて頂きたい。


2、人権賞の創設と人権擁護活動の展開

(1)人権賞については、5回の常議員会、2回の会務懇談会、2度に亘り12の関連委員会に求意見という慎重な手続きをへて3月10日の臨時総会にかけさせて頂いた。その帰趨は本稿執筆時点では不明であるが、市民と連携して人権擁護活動を推進するという理念は正しかったと考えている。

(2)取調べ全過程の可視化を求める運動。
 当会可視化実現対策本部では5月の布川事件元被告人の杉山さん櫻井さんを招いたキャンパスブラザでの集会に続き、9月以降、京都府下全市町村議会での可視化意見書採択運動に取り組んだ。全本部員が府下市町村を担当し足を運んで議会要請をしたところ、どの議会でも可視化の必要性を理解して頂き、短期間に京都府、京都市の両議会を始め府下の過半数の議会で意見書を採択していただいた。

(3)「労働と貧困」「ワーキングプア」という日本社会の抱える深刻な問題への弁護士会の取組みが前年度村井会長の時に始められた。この取組みを本格化させるため本年度、「労働行政への申立事件に対する法律援助制度」創設に取り組んだ。法律援助の資力要件を満たす場合に、労働基準監督署などへの申立、告訴告発等の事件を依頼する弁護士に5万円ないし10万円の着手金を弁護士会から支出する制度である。日弁連の行っている7つの法律援助制度では手つかずの新しい援助制度であり仙台、大阪に続き京都が3番目となる。

(4)高校への無償の法教育出前授業の実施
 当会規則上、学校から講師委託料を頂くのが原則となっている。しかし学校側で法教育授業のための予算を組んでいるところは少ないため、これがネックとなって講師依頼が進まないことがあった。そこで試行的に平成23年1月から同24年3月まで京都府下の全高校を対象にして、学校からは委託料を一切頂かず、派遣する講師弁護士には会負担で日当を支給する取り組みを開始した。


3、法律相談の活性化に向けての取組

 近年、全国的に、弁護士会に寄せられる法律相談件数が減少している。今年度は、法律相談件数を飛躍的に増加させることを目標に掲げ、様々な相談を打ち出した。飛躍的増加は叶わなかったが今後減少に歯止めをかけられることを期待している。

(1)交通事故センターの設立
 京都地裁の交通事故事件は増えている。交通事故は弁護士にとって重要な業務分野である。財団法人日弁連交通事故相談センター京都支部の交通事故相談に頼るだけでなく、交通事故相談体制の充実と被害救済を図るため、当会独自の交通事故センターを3月総会で設立した。まずは電話による交通事故無料相談の回数増加を実施する。

(2)府下各地での無料法律相談の展開
 京都府中部地域での巡回無料法律相談会を6月に亀岡市、南丹市、京丹波町などで実施し、引き続き京都府南部地域でも9月に一斉無料相談会を開催した。相談枠が全部埋まる地域が続出するなど各地で多くの相談があった。毎年12月に実施されてきている北部地域の一斉無料相談会とともにこれら各地域での無料相談会の定例化を目指すことになる。また園部センターでは本年2月から5月まで全ての相談を無料で行う事業を試行的に実施している。

(3)綾部市における常設相談の試行的実施
 北部の主要都市でありながらこれまで弁護士会の常設相談所のなかった綾部市においても地元の要請を受け今年2月から毎週木曜日に法律相談を試行的に開始している。需要が確認出来れば次年度常設相談所設置が予定されている。

(4)夜間相談の試行的実施
 タワービル内の京都駅前センターではこれまで土日を含めた毎日昼間の一般相談と平日夜間の無料多重債務相談を行ってきた。しかし勤労者にとっては勤め帰りの平日に夜間相談があった方が便利なので昨年11月から平日夜間に一般相談を試行的に実施している。利用状況を見て今後常設化を検討することになる。
 
(5)クレサラ多重債務の無料電話相談試行
 近年、東京の過払事件専門法律事務所などに流れているのか当会の多重債務相談窓口の相談減少が顕著である。まだまだ多重債務相談の需要はあると見られ、弁護士会の相談窓口の広報と利用のしやすさが課題である。消サラセンターでは新企画として本年3月から5月まで従来の対面相談に加えて、電話による無料相談を行うことにした。


4、中小企業への支援

 4月から中小企業を対象にした日弁連の無料相談事業が始まった。前年度、当会に設置された中小企業法律支援センターが「ひまわりほっとダイアル」(0570−001−240)で申し込まれた相談を登録弁護士が各法律事務所で対面で相談する事業を始めた。さらに本年度当会では日弁連のサービスを一歩進め時間無制限で無料となる措置をとった。自治体や金融機関、商工団体でチラシを配布し、ホームページでも広報し相談件数増加に努めたところ徐々に浸透し受任も増えつつある。中小企業の経営を日常的に弁護士が法律面でバックアップする仕組みとして是非成功させたい。愛知県で始まった地域弁護士制度導入の検討も同センターで行って頂いている。


5、司法システムの改革

(1)北部地域での裁判官、検察官増員を求める決議
 北部会員から北部地域での司法過疎がますます進行し、その弊害が広がっているので弁護士会として取り組んで欲しいとの要請があった。これを受けて司法改革委員会において北部会員にアンケート調査を実施し、その結果を踏まえて北部の地裁支部における裁判官、検察官の増員を求める決議を3月総会に提案した。弁護士過疎が解消しつつあるなか、支部での裁判官、検察官の増員は日弁連の取り組む全国的課題となっている。引き続き北部の司法過疎対策を目指す取組みが必要である。

(2)裁判所南部支部実現へ向けた運動
  地家裁の南部支部がないことにより南部住民が被っている法的サービスの欠落を少しでも補うために10月から京都府宇治総合庁舎で弁護士会ADR南部支部を開設した。ここに多数の事件が持ち込まれることにより裁判所に対し裁判所南部支部の必要性を説得的に訴えることが可能となる。また南部支部設置推進対策本部では南部の社会福祉協議会との懇談会を重ね裁判所の必要性を訴えた。

(3)裁判官評価制度の活性化のために
 弁護士が提出した裁判官の人事評価が実際に最高裁の下級裁判所裁判官指名諮問委員会でどのように生かされているか、その実情を知るため、現委員である明賀弁護士をお招きしての講演会を開催した。また評価書をより提出しやすくするための努力をした。さらに工夫が必要である。


6、委員会、常議員会、総会の活性化

  毎回の常議員会資料一式を会館4階備え付けのファイルに綴じて会員がいつでも閲覧できるようにした。また会員専用HPで議題を閲覧できるようにした。常議員会議事録の公開も検討したがこれは中途で終わった。委員会の定足数を3分の1から4分の1に下げる規程改正を3月総会に提出した。委員会活動を活性化する意図での改正と位置づけている。
会長、副会長への手当支給制度の創設を3月総会にかけさせて頂いた。委員会活動についても活性化のために委員会活動無償原則の部分的見直しが今後必要となると考えている。法教育委員会の講師派遣を有償にする試みは実質的にその一歩となる。



7、若手対策

(1)若手会員の会費の減免問題は取り組めないまま終わった。
(2)司法試験合格者については「現状より相当数、更に減員する」旨の会の意見書をまとめ日弁連の意見形成に寄与した。

  次年度の1年間は弁護士会の主張への市民マスコミの理解を求める運動に日弁連をあげて取り組むことになる。1000人ないし1500人の合格者であっても弁護士の人口は着実に増加し市民への法的サービスに支障を来さないことは説明可能と思う。一方で法科大学院については整理統合と定員の更なる削減、地方への適正配置の必要性を訴えることになろう。

(3)司法修習生の給費制維持
 司法修習生に対する給費制を維持する裁判所法改正を実現する運動の成功に当会本部は全力をあげた。5月から11月まで署名運動、街頭宣伝、議員要請、ロースクールでの小集会を積み上げ、猛暑の8月に市民集会を240名で成功させ、9月の国会要請パレードにはビギナーズネットを含めた大部隊を東京に送り出すなど、全国の運動に貢献した。



8、その他

(1) 隣接士業による権限拡大運動の情報収集、自治体への弁護士法72条の広報などを目的とする業際問題対策PTを立ち上げた。
(2)今年度、弁護士が刺殺される事件が2件発生した。その1人は津谷日弁連消費者委員長であった。業務妨害対策への取組強化を所管委員会(民暴非弁委員会)にお願いした。
(3)法テラスが打ち出した資力要件撤廃の法律相談(初期相談)構想に対し、反対意書をまとめ提出した。
(4)会館への固定資産税の課税減免継続を求める取組みを行っている。
(5)大阪弁護士会の要請により近弁連会費が次年度値上げされる見込みである。
(6)特別会費(旧受任事件負担金)については徴収の手間と会員の負担額の著しい格差、不公平により廃止に向けた議論は早晩避けられないと考える。
(7)事務長問題、新規職員採用に相当な労力をかけた。